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お知らせ
2020/09/13

過疎地の介護サービス、どう確保? 地方側は運営基準の弾力運用を要請

人口の少ない過疎地や中山間地域などでは、特例として事業所の運営基準を緩和して欲しい − 。来年4月の介護報酬改定に向けた協議を重ねている審議会の4日の会合では、こうした地方からの要請が取り上げられた。

利用者、職員ともに十分な確保が難しく、介護サービスの運営を続けていくことが一段と難しくなっているという事情がある。全国町村会の椎木巧副会長(周防大島町長)は、「事業所の採算が合わないため、必要なサービスの提供が困難だったり利用者の選択肢が限られていたりする地域が少なくない。大きな課題だ」と訴えた。

第184回社会保障審議会介護給付費分科会資料

地方側は既に、過疎地や中山間地域などについての具体的な提案を行っている。

例えば訪問看護ステーション。看護職員の人員配置基準を緩和すれば、事業者の新規参入や人手不足による撤退の阻止につながると主張している。比較的大きな町の事業所に関わってもらうとしても、移動に時間を要してどうしても赤字になるという。

小規模多機能に関する提案もある。そう遠くない未来にニーズの縮小が見込まれる地域では、登録定員の超過を一時的に認めて欲しい(期間限定で報酬減算を適用しないで欲しい)というものだ。このほか特養の人員配置基準をめぐっても、地域の実情に応じた柔軟な運用を可能とするよう求める声が出ている。

全国町村会の椎木副会長は今回、これらの提案について「地方の切実な思いが込められたもの。背景を十分に考慮して前向きに検討して頂きたい」と改めて呼びかけた。

ただし、審議会の他の委員からは慎重論が相次いだ。

日本医師会の江澤和彦常任理事は、「サービスの質を担保する観点から慎重に判断すべき。安易に緩和しない方がいい」と指摘。東北福祉大学の井口経明客員教授は、「どこの地域に住んでいるか、ということでサービスの内容や質に差が生じることは適切でない」とくぎを刺した。

厚生労働省は今後さらにこのテーマを掘り下げていく方針。今秋にも具体策の方向性を提示し、年内にはコンセンサスを形成したい考えだ。

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